豊かな川、いつまでも
水の入った田んぼを見かけるようになりました。この時期、近所の川は産卵のために琵琶湖から遡上してくる湖魚たちで賑やかになります。そこへ釣竿を持って出かけるのが、私たちの今の楽しみです。
好機は水嵩が増える雨上がり。畑でミミズを収穫?し、川縁で糸を垂らして獲物を待ちます。本命は鮒鮨の材料のニゴロブナですが、狙って釣るのは難しいもので…。今季初の釣果はイシガメ。よく釣れるのはタカハヤ。オイカワやゴリも釣れます。
先日、琵琶湖博物館の学芸員金尾滋史さんが遊びに来てくれたので、いつものポイントで投網を入れてみることに。すると、ほんの数回でアユやハス、ウグイ、カマツカ、ゼゼラなど12種類の魚がかかりました。一度に多くの魚に出会えて私たちは大喜び。金尾さんも「豊かな下流域だね」と高評価です。
でも、一緒に見ていた近所のおじさんは少し残念そう。おじさんが子どもの頃は「ぼてじゃこ(タナゴ)みたいになったらあかんで」と慣用的に使われるくらい、タナゴが山程釣れたそうですが、今回の網にはかかりませんでした。
金尾さんは「次は標本を作ろう」と言います。曰く、標本は「自然史のタイムカプセル」。百年先の未来が今とどれだけ違うのか。後世に伝えるには一番信頼性が高いそうです。こんなに豊かな地域でも、少しずつ変化してしまう環境。標本の魚が、百年後にもこの川で泳いでいてくれる未来がいいな、と思いました。
(2018年5月・朝日新聞滋賀版)