古民家・源左 みんなが集まる場所に
私たちが暮らす大音集落では、各家に古くから使われてきた「屋号」があります。大家の横関隆幸さんの屋号は「市右衛門(いっちょも)」さん、その畑は「いっちょもの畑」です。同じ名字の人が沢山いるので、集落の人は互いの屋号で呼び合うこともよくあります。
丘峰喫茶店の建物は、築350年以上とされる茅葺き屋根にトタンを被った古民家。かつての家主さんの屋号から「源左」と呼ばれ親しまれています。
今は綺麗な源左ですが、8年前まで、壁も床も腐りかけ、解体の話が持ち上がっていました。
話を聞いた余呉町の大工清水陽介さんが、源左を訪れて中を覗くと、湖北でも滅多に出会うことのないケヤキの梁の太さに目が留まりました。家主に「潰すのはもったいない」とお願いし、友人の横関さんが譲り受けることになりました。
清水さんと横関さんは、使い道も決まらないまま源左を直し始めました。「寂しくなっていく湖北に人が集まる場所を作りたい」。それが2人の願いでした。
そうして生まれかわった源左で、昨春から私たちがお店を始めることになりました。横関さんは「源左も嬉しそうだ」と喜んでくれます。来店された地元の人が「小さい頃、ここのお風呂に入ってね」などと懐かしそうにお話してくださることがあります。そのたびに地域と一緒に生きてきた源左の歴史を感じ、この建物に、私たちも一層愛着が深まっていくのです。
(2018年4月・朝日新聞滋賀版)