丘峰喫茶店へようこそ
皆さん、初めまして。「お久しぶりです」とご挨拶した方がいいかもしれません。実は私、3年前まで朝日新聞で記者をしていました。
2010年に入社し、神戸、佐賀、大津と赴任。事件取材の傍、各地を訪ね歩くうちに、農村の暮らしや食文化に魅せられ、15年に退職。取材で知り合ったギター職人の夫と一緒に、賤ヶ岳(長浜市木之本町)の麓にある「大音」という集落で、田舎暮らしを始めました。昨春には、築350年と言われる古民家で「丘峰(きゅうほう)喫茶店」という、手作りランチと喫茶のお店を開店。夫婦で試行錯誤をしながら、日々の暮らしを楽しんでいます。
移住してから知ったのですがこの大音集落、冬は一晩で1㍍を超える雪が降ることもある「雪国」なのです。大津で2年間暮らした私にとって、ご近所さんの車庫から手押しの除雪車が登場するのを見たときには「同じ県内とは信じがたい」と驚きました。
という訳で、雪深い冬の間は思い切って店を休業。夫は本業のギター製作に打ち込み、私は2年前に一人で始めた出版社「能美舎(のうびしゃ)」の本作りに励んでいました。
気がつけば、フキノトウも花が開き、庭先にはツクシがぐんぐんと首を伸ばしています。春の訪れとともに、お店は再開。このコラムもスタートです。(2018年4月・朝日新聞滋賀版)